Contents
はじめに
日本においては、繁華街などの風俗店に行けば、性的サービスを受けることができます。独身者が楽しむ分にはいいのでしょうが、既婚者がそういうところに行ったことが配偶者にばれるのはトラブルの元です。
夫が風俗に通っていることを知ったら、裏切られたとショックを受ける女性は多いのではないでしょうか。妻がありながら風俗通いなんて許せない、浮気であると感じて、離婚を考える人もいるでしょう。
一方で、多くの男性は風俗に行くことを浮気とは考えていません。せいぜい、後ろめたいところはありつつも、アダルトビデオを見ることの延長上のような遊び感覚でしょう。
それでは、結婚しているにも関わらず風俗に行くことは、離婚の原因になるのでしょうか
離婚原因となる不貞行為
法律上問題となる不倫や浮気とは、「不貞行為」を指しています。
不貞行為とは、既婚者が配偶者以外の異性と自由意思で肉体関係を持つこととされていて、民法に定めのある離婚事由のひとつです。
つまり、夫が不貞行為をしたのであれば、それを理由に妻は離婚を請求することができます。
また、その不貞行為によって精神的苦痛を受けたときには、夫や不倫相手の女に慰謝料を請求することもできます。
風俗通いは不貞行為か
風俗通いも、要件を満たせば不貞行為となることがあります。
それでは不貞行為と認められる要件はどのようなものなのでしょうか。
(1)夫の風俗通いが頻繁で長期間にわたること
夫の風俗通いを理由に離婚や慰謝料が認められるためには、かなり頻繁に風俗に通っていたという事実が必要です。これによって配偶者や家庭を顧みないような状況になっていたと評価できることが必要でしょう。
付き合いや興味本位で数回行ったという程度では、家庭に与える影響は大きくないと判断されるためそれだけですぐに離婚が認められない可能性があります。
頻繁にかつ長期間にわたって風俗に通っていた場合や、あるいは、気に入った子と風俗店以外の場所で個人的に会って性行為があった場合などは不貞行為として離婚が認められる可能性が高まるでしょう。
(2)実際の性行為が発生していること
夫が風俗店に通っていたとしても、性行為等がない場合は不貞行為にはなりません。
日本の風俗店は、売春防止法等の法令の関係で、建前上は接客として性行為を行っていないことになっています。
しかも、業態によっては、性行為やそれに類似する行為を本当に行っていないサービスもあります。例えば、「リフレ」と呼ばれるサービス形態では、一般的に性行為は行わないとする業態が主流です。
つまり、単純に「風俗」とひとくくりにしてしまうと、不貞行為(性行為)が行われていない場合も含まれていることに注意が必要であり、どのような形態の店に通っていたか詳細を明らかにする必要があります。
(3)恋愛感情(相手に対する慰謝料請求の場合)
恋愛感情がなくても、法律上の不貞行為ではあります。
よって、(1)と(2)の要件を満たしていれば、法定離婚事由に該当し、離婚を請求することが可能です。
ただし、不貞行為の相手への慰謝料請求については別問題です。
この場合の不貞行為の相手である風俗嬢に対し、慰謝料請求は可能なのでしょうか。
これについて、慰謝料請求においては、基本的に「家庭を壊してしまう」という認識があって初めて認められるものです。
不倫相手、つまり風俗嬢は、顧客について既婚かどうかを知っていることが必要になり、さらには婚姻関係を破綻させることにおける認識までもがあるか、問題になります。
一般的には、彼女たちも「仕事」として「お客」と関係を持っている以上、そしてその範囲以上に深入りをしていなければ(つまり恋愛感情で結びついていなければ)、たとえ店外で関係を持っていたとしてもこのような認識があったと認めることはできないでしょう。
夫への慰謝料請求をするための証拠
慰謝料や離婚を請求するには、不貞行為といえるような風俗通いがあったことの証拠が必要になります。
風俗通いを不貞行為として証明するにはどのような証拠が考えられるのでしょうか。
・夫の自白を記載させた書面(反省文など)
・肉体関係の直接的な写真・動画
・風俗店の会員証
・風俗店を利用したことがわかる領収書やクレジットカードの明細書など
・風俗店の女性と直接やりとしたメールやLINEのメッセージなど
これらの証拠は、実際に風俗で性行為があったこと、風俗通いが高頻度で期間が長きにわたっていたことなどを証明できるものでなければいけません。
このような証明の目標を考えると、1つの証拠に頼るのではなく、できるだけ多くの証拠を集めた方がよいでしょう。
「不貞行為」に該当しない風俗通いでも「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し離婚事由になる可能性がある
法定離婚事由は5つ定められており、「不貞行為」と別に「婚姻を継続し難い重大な事由」というものがあります。
風俗通いが頻繁かつ長期間とまではいえない、性行為を伴わないサービス業態の店にはまっていた、など「不貞行為」とまでは言えない風俗通いでも、その期間、程度、態様等やその他の要素によっては、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性があります。
まとめ
風俗通いが法律上の「不貞行為」に該当し、離婚請求や慰謝料請求ができる場合は、限定的だと考えたほうが良いでしょう。
端的に言うと、夫が長期間、頻繁に風俗に通い続けていた場合で、性行為等を含むサービスを受けていたケースにおいては、離婚や慰謝料を請求することが可能、ということになります。
もっとも、そのような風俗通いではなかった場合にも、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」といえる可能性はあります。
夫の風俗通いで離婚や慰謝料請求など法的な対応を考えている場合には、弁護士に相談することをお勧めします。