はじめに
あなたが妊娠中に、夫の浮気の事実が発覚したら、妻としては大きなショックを受けてしまうと思います。しかしながら、不倫慰謝料請求を取り扱っていると、妻の妊娠中に夫が不倫をしていたというのはよくあるケースなのです。
理由は単純で、妻が胎児や母体にかかりきりとなり、夫にかまって(愛情表現という意味でも「監視」という意味でも)いられなくなるからです。まぁ、そんなことで浮気をされては、妻としては「自分は大変な思いをしているのに、夫は裏切って好き勝手なことをしている」と怒りが爆発してしまうことでしょう。
そして、夫が不倫や浮気をしたという事実を目の前にして、「離婚」という二文字が頭に浮かぶのではないでしょうか。しかし、これから子どもが産まれてくるのですから、このタイミングで離婚するかどうかは慎重に考える必要があります。
やるべきこと
(1)事実確認
夫の不倫が発覚した場合、その後の判断の前提としてやるべきことは、事実確認です。「まず」やるべきことということもできますが、その後の判断の大前提路なるもので、やるべきことの「ほぼ全て」と言うこともできます。
夫の浮気の事実を確認する場合、一般的には夫には内緒で証拠を集めることが勧められます。
妊娠中の浮気の場合には、まずは夫に直接問いただすのがよいでしょう。なぜなら、妊娠中の浮気は夫にとっても一時的なものに過ぎないことが多く、夫婦関係も比較的修復しやすいからです。証拠を突きつけるよりも、本音で話し合う方が良い結果につながることが多いといえます。
たしかに、先に問いただすと証拠隠滅をされてしまい、うやむやにされてしまうおそれもあります。
しかし、ご自身で証拠を集めようとするとプライバシー侵害の問題も起こりかねません。合法な調査では、料金もそれなりにかかってきてしまいます。
それよりも、浮気を確信したあなたが、夫を許すことができるのかを考えることが先決です。夫に直接問いただして、あなたの辛い気持ちを伝え、そのときの夫の反応を見てあなたなりに愛情を確認することが大切です。
確固たる証拠を集めるのは、夫の愛情が確認できず、離婚や相手への慰謝料請求を絶対しようと決意した時でも遅くはないでしょう。
(2)判断
事実確認をしたら、①関係を修復する、②離婚する、という判断をすることになります。
「①関係を修復する」という選択をした場合、不倫の再発防止について考えておかなければなりません。
「②離婚する」という判断については妊娠中や出産直後であるだけに慎重にする必要があります。ごく簡潔に結論を言ってしまうと、夫からの慰謝料、養育費、財産分与などを最大限に多く取れたとしても、その後のシングルマザーとしての生活は、離婚しなかった場合と比べて貧しく厳しいものになることがほとんどであるためです。片親家庭における貧困は大きな社会問題ですので政策による解決が待たれます。そういったことを考慮しても夫が許せない場合には、離婚を決断することになります。
これらの判断とは別に、夫の不倫相手に慰謝料請求をするかどうかを判断することも必要です。
不倫相手に慰謝料請求をする方法
離婚する場合でも夫とやり直す場合でも、妊娠中に夫と浮気した相手に損害賠償として慰謝料を請求することは可能です。
慰謝料の相場は50万円~250万円程度ですが、離婚する場合は150万円~250万円、夫とやり直す場合は50万円万円~200万円程度を目安に請求するとよいでしょう。
ただし、夫とやり直す場合は、慰謝料を支払った浮気相手から「求償権」といって、夫の負担分を浮気相手に支払うように求められる場合があります。トラブルを早期におさめるためには、初めから低めの金額をして、求償権を放棄させるべきです。
具体的な請求方法としては、まず浮気相手に対して内容証明郵便で慰謝料を請求します。
相手方から回答があれば話し合いをして、合意できれば示談書を作成しましょう。
話し合いがまとまらない場合には、損害賠償請求訴訟を起こすことになります。
裁判では証拠が不可欠なので、浮気の証拠は慰謝料を請求する前に確保することが大切です。
まとめ
妊娠中に不倫をされた場合には、妻として怒るのも当然の話ですが、離婚をするか否かの判断としては、子どものことを第一に考えなくてはなりません。これに対して、不倫相手への慰謝料請求については、そういったことからある程度切り離して考えることができると思います。不倫慰謝料請求について、してみたい又はするかどうか悩んでいるという方は弁護士に相談されることをお勧めします。