はじめに
配偶者の不倫相手に対して、慰謝料請求を考える際、手段として最初に思い浮かぶのは、不倫相手と直接連絡して、話をして示談交渉するということではないでしょうか。
仮に、自分で直接交渉することは負担だと感じて弁護士に依頼するとしても、一般的には依頼を受けた弁護士は不倫相手と交渉することから始めます。
もちろん、最初から調停や訴訟をすることも禁じられてはいませんが、交渉で解決するということには、大きなメリットもあります。
ただし、(特に自分で直接行う交渉で顕著ですが)事態がややこしくなる可能性をはじめとしたデメリットもあります。
今回は、このような示談交渉のメリット・デメリットを見ていきます。
示談交渉のメリット
(1)早期の解決も可能
不倫による慰謝料請求の裁判の場合、内容によりますが期間は半年から長引けば3年ほどかかるケースもあります。
それに対し、示談交渉は不倫相手が素直に応じてくれさえすれば、すぐに慰謝料を手に入れることも可能です。
(2)訴訟等よりも慰謝料が大きい可能性もある
訴訟による慰謝料の請求の場合、裁判所が介入して不倫の状況や結婚期間、子どもの有無、判例などさまざまな要素を考慮して慰謝料の金額を決定します。判決に至らなくても、和解の際には裁判官の慰謝料金額に対する心証は大きく影響するでしょう。
示談交渉で慰謝料請求を行う場合は裁判所の介入がないため、相手が合意さえすれば、たとえ相場よりも高額な慰謝料であっても支払ってもらうことができます。
不倫相手が社会的に地位の高い人であったり、大事にしたくなかったりした場合、早期の金銭的な解決を希望することで、相場よりも高い慰謝料を支払う可能性もあるからです。
(3)不倫問題を穏便に済ませることができる
配偶者の不倫は、たとえ自分に落ち度が無かったとしても、世間体などを考慮してできればこっそりと対応したいものです。
しかし、調停や裁判で不倫の慰謝料を請求するとなると、場合によっては意図しない範囲の周囲にも知られることになります。
その点、自分で示談交渉をすれば、当事者間で穏便に(秘密裏に)済ませることが可能です。
示談交渉のデメリット
(1)冷静に話し合いができず、解決が遠のく
弁護士に依頼せずに直接交渉をするときにありがちですが、こちらが怒りの感情から冷静に話をすることができず、不倫相手側も慰謝料を支払って解決する気が失せてしまい、解決が遠のくことがあります。お互いの交渉中の態度・言動がきっかけで話がこじれてしまうと、交渉で解決することが難しくなります。
(2)相手が同意しなければ示談が成立しない
示談交渉による解決は、相手が慰謝料の金額や支払期限などの諸条件に合意したときだけ解決となります。
相手との合意を得ようと思えば、慰謝料の金額も相手の資産や収入などをベースにして決める必要があるため、相手が納得できる条件でなければならないという不自由さがあります。
(3)合意内容の不履行があっても強制執行(差押え)ができない
相手が支払期限までに慰謝料を支払わないなど示談内容の不履行があった場合、相手の財産の差し押さえなど法的措置を取ることができないため、示談交渉だけでは強制力に欠けます。
差し押さえを行いたい場合は、示談内容を公正証書にしておくか、そうでなければあらためて裁判を起こす必要があります。
不倫慰謝料請求での示談交渉の方法
示談交渉では、相手に対して文書で不倫慰謝料を請求することを通知することから始めるのが一般的です。
自分で直接交渉を行う際でも、慰謝料請求したことを明確に残しておくため、文書の送付をするべきです。書面での連絡方法は双方のやり取りを書面に残すことができ、なおかつ示談内容も事前に整理したうえで通知できるため、口頭による伝達よりも相手に対して明確な意思を伝えることが可能だからです。
送り方は、普通郵便でも構いませんが、慎重を期して書留郵便や内容証明郵便を利用するのがよいでしょう。
とくに、内容証明郵便は、慰謝料を請求する意思を正式に伝達する目的で法律の専門家も利用しており、送付した内容を後々証拠としなければならない可能性を考えると一番確実と言えます。
最初に慰謝料請求を行う旨を文書で通知したら、その後のやり取りまでいちいち内容証明郵便で行う必要は無いと思いますが、交渉の中での条件の再提示など、重要なやり取りは文書にして書留で送るなど形が残るようにしておくのが良いでしょう。
不倫相手との示談交渉を成立させるためのポイント
示談交渉は、当事者がなるべく冷静に交渉のテーブルに付くことが大前提です。
そのうえで、こちらが優位に交渉をするために、次のポイントを押さえておきましょう。
(1)不貞行為の証拠があることを伝える
示談交渉をこちら側に有利に進めるためにも、事前に不倫の証拠を集めておく必要があります。
証拠は客観的に文書などの形で示せるものでなければなりません。
例えば、配偶者と不倫相手が二人でラブホテルに入っていく写真や、不貞行為そのものを録画・録音したファイルなどが客観的な不倫の証拠と認められます。
(2)慰謝料の額を見直す
どれだけ不倫の証拠を突きつけても、相手の経済状況ではとても払えないような高額の慰謝料を請求すれば示談交渉はまとまりません。
慰謝料の金額で折り合いをつけるためには譲歩も必要です。
一般的に慰謝料の相場は不貞行為が継続していた期間や頻度、婚姻期間や子供の有無などを考慮して、数十万円~300万円とされています。
金額にこだわりすぎて交渉がまとまらず、裁判になった場合には余計な時間も費用もかかるうえ、裁判所の判断で結局自分が理想としていた金額は得られなかったという結論も十分にありえます。
状況によっては、慰謝料の額を見直すことは不可欠とも言えるでしょう。
(3)不倫慰謝料請求に強い弁護士に相談する
自分で示談交渉をしようとして分からないことが多いのであれば、プロである弁護士に相談されることをおすすめします。
不倫問題に強い弁護士であれば、内容証明の書き方から示談書の内容、不倫の証拠集めなどについてアドバイスしてくれることでしょう。また、依頼をすれば、あなたに代わって示談交渉もしてくれます。
まとめ
示談交渉には調停や裁判とは異なるメリットがありますが、デメリットもあります。とくに自分で示談交渉をしようとすると、不倫相手と直接やり取りをするという精神的負担があるということも付け加わります。
そのような場合には、弁護士に示談交渉を依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。不倫慰謝料の請求で悩んだら、まずは相談だけでもご利用されることをおすすめします。