はじめに
配偶者が不倫をしたとき、配偶者だけでなく不倫相手にも責任追及したいと考えるのは自然な感情だと思います。不倫相手に慰謝料を請求ができることは広く知られていますが、具体的にどのような方法、手続きによって請求していくのでしょうか。
不倫慰謝料を請求していく方法が話し合いや裁判だと分かる方も多いと思いますが、改めて慰謝料請求の方法と手続きについての知識を得ておくことで、有利に対応できると思います。
今回は、不倫慰謝料を請求する流れに沿って、注意すべきポイントを解説していきます。
不倫相手に慰謝料を請求できる条件
手続きの流れに入っていく前に、不倫相手に慰謝料を請求することが出来る条件を簡単に確認していきます。
①配偶者が既婚者であるという事実を、不倫相手が知っていた、または知り得た
②不倫相手が自分の意志で配偶者と肉体関係を持った
③不倫開始時には、まだ夫婦関係が破綻していなかった
④慰謝料請求の時効期間である3年が経過していない
⑤不倫相手がどこの誰なのか、特定できている
本当は既婚者なのに独身者と偽って、独身女性にアプローチする既婚男性はとても多いです。巧みに嘘をつき通していた場合、不倫相手には何の落ち度もないため、慰謝料請求ができないと考えられます。反対に、既婚者だとばれたことであなたの配偶者が訴えられる可能性があります。
また、配偶者が暴力や権力にモノを言わせて無理やり肉体関係を持った場合についても、同じことが言えます。
ちなみに、この場合の肉体関係には“キス”や“手を繋ぐ”は含まれないと考えられています。
不倫が始まった時点で既に別居しており夫婦関係が破綻していた場合にも、残念ながら慰謝料を請求できないケースが多いです。なぜなら、不倫相手に慰謝料が請求できるのは、夫婦関係にダメージを与えて婚姻の継続に影響が出ることが理由となっているため、既に婚姻関係が壊れている場合にはこの影響がないと考えられるためです。
不倫相手の特定、不倫の証拠集め
配偶者が不倫していることが発覚したら、まず一番にするべきことは、不倫相手の名前と住所の特定と証拠集めです。
当たり前ですが、配偶者の不倫という事実が発覚しても、不倫相手がどこの誰か不明では慰謝料を請求することはできません。もし自力で調べてもわからないようであれば、探偵に依頼するのもひとつの方法です。
また、手元に証拠がないまま問い詰めたとしても、相手はシラを切りながら証拠隠滅を図るだけということも多いです。不倫の証拠として提出されるものの例としては、
スマホ上のやり取りのスクリーンショット
ラブホテルの領収証
旅行先のホテルの領収証
通話履歴
探偵の調査報告書
万が一不倫相手や配偶者が不倫の事実をあっさりと認めた場合には、相手の自白を録音した音声データや念書などを証拠として提出することも考えられます。
不倫相手との交渉
証拠を集め、不倫相手を特定できたら、ほとんどのケースではまず当事者同士の交渉を行います。いきなり不倫相手に訴訟を提起するケースは、それほど多くありません。交渉は、書面と口頭の大きく2パターンにわかれます。
弁護士は、書面を内容証明で送って相手に慰謝料の支払いを求めることから交渉を始めますが、当事者間で直接交渉をする場合は、不倫相手と直接会って話し合うということも多いです。もちろん自分で文例などを見て通知書を作り、内容証明郵便で不倫相手に対して送る人もいます。
いずれにせよ、不倫による慰謝料請求の交渉には法律知識と冷静な対応が求められます。自力で手続きをすることも不可能ではありませんが、経験豊富な弁護士に早い段階で依頼してしまった方が失敗のリスクは減るでしょう。
不倫相手と示談書の作成
交渉の結果、不倫相手が事実を認めて慰謝料の支払いを約束すれば、示談書を作成します。この示談書とは、トラブルについて話し合いの末決着がついたことを証明する文書のことです。不倫があったことを認め、不倫関係を解消すること、慰謝料の起源や金額などの内容について記載します。
口約束のみでは、後々「そんなこと言った覚えはない」「やっぱり払いたくない」と言われてしまうおそれがあります。ですから、必ず目に見える文書という形で残しておくことをおすすめします。
また、合意した内容について普通の示談書ではなく公正証書も作成する、あるいは示談書を作ってその後同じ内容の公正証書を作成することも多いです。
公正証書とは、公証役場で公証人立会いのもと作成される文書で。当事者間で作っただけの示談書よりも、証拠として強力です。さらに、不倫相手が慰謝料を支払わなかった時に給料や財産を差し押さえる“強制執行力”が公正証書にはあります。
ただし、公正証書を作成するためには当事者双方(またはその代理人)が公証役場に出向く必要があります。不倫相手にとってはかなり心理的ハードルが高いですから、合意を取り付けるまでに慎重な対応が求められます。
話し合いがまとまらなければ裁判へ
不倫相手との話し合いがまとまらない場合は、裁判手続きに移行することになります。裁判を始めるにあたっては請求の内容を記載した訴状を裁判所に提出します。訴状には、慰謝料請求の理由である不倫の詳細、請求する慰謝料の金額などが記載されます。また、不倫の証拠も訴状と併せて提出します。
裁判がはじまると、あなたの主張に対する不倫相手の反論、それに対するあなたの反論、という形で反論が続いていきます。不倫相手が不倫の事実を認めない場合、裁判官に客観的立場から判断してもらう必要があります。
たとえ不倫が事実だとしても、第三者である裁判官から見て「これだけの証拠では不倫していたとは断定できない」と思われてしまうと、慰謝料請求が認められないことがあります。
裁判が進行していくと、裁判官から和解を勧められますので、和解について検討します。そこで何らかの合意が成立すると、裁判上の和解で慰謝料・解決金の支払いが取り決められます。裁判上の和解には、取り決められた慰謝料支払いが行われなかった時に差押をすることができる効果もあります。
裁判官から和解を勧められても、最後までお互い一歩も譲らない場合には、当事者の主張や証拠をもとに裁判官が判決を下します
まとめ
不倫慰謝料請求をする方法や手続きについて、イメージを持ったうえで不倫相手との交渉に入ることが出来れば、するべきことが分かって有利な解決に結びつくことがあります。それでも、分からないことや困難なことがあると思いますので、そのような場合には、早い段階で弁護士に相談しましょう。